今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

    記帳台   向笠 千鶴子

 二・二六幼な心に雪つもる (二・二六事件)

 探梅に西郷山の小半時

 春うらら()(しき)

 啓蟄や地球儀いつも凪ならん

 椋鳥の百羽千羽よ花の宵

 鳥帰る伊良子岬の一人旅

 

    滝 桜   石澤 青珠

 夢殿の風鐸春の雨しづく

 鳥交る髪の先まで憤怒仏 

 祇王寺に居着く白猫暮の春

 何か棲み何処か蠢く滝桜

 佐保姫の領布の風とも法隆寺

 花の奥闇百年の蔵座敷

 

    春の虹  谷中 淳子

 啓蟄の母へ拳をひらかざる

 穴を出づ蛇と並んで歩きけり

 初蝶を告げたきひとの此処に居ず

 春の虹果てて戻りぬ厨事

 かげろふの中へと先に行かせたり

 烏の巣組めるを見つつ通勤す

 

 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   啄木忌机代りの古鞄  西浦 すみ恵

  この古鞄は、革製のむしろトランクに近い代物

 だろう。

  旅の途中か、家具のないアパートで机代わりに

 している様子は、大いに目に浮かぶ。

  啄木と言えば、窮乏生活の哀歓を詠んだ生活歌人。

 机代わりに古鞄を使っていたかもしれない。時代の

 雰囲気が出ている。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    片づけし雛の間のけふ古りしかな  髙久 久美子

  お雛様を飾っている間は、明るく華やいでいた部屋が

 片付けられて、今日改めて眺めるとなんだか古い部屋に

 なってしまっている。淋しさはふと感じることであるが、

 古くなったという時の経過まで感じている。鋭い感性と

 思う。