今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   花の門  小野田 征彦

 三月やカルチェラタンの町明かり

 花冷えの鶯張りを強く踏む

 花の山より流れ継ぎ滑川

 礼深く雲水は出づ花の門

 祇園山より囀の滑りくる

 ハモニカや雀隠れに寝転んで

 

   勿忘草  倉橋

   悼 寺内 義哉

 千の風になり春天を逝き給ふ

 死者はわれに死者にわれ無し勿忘(わすれな)(そう)

 げんげ咲く旧(こく)(げん)(さん)長明寺 

 小心文放胆文や猫の恋

 柿若葉あをぞらの色あはくあはく

 抱卵や引継ぎ高く鳴き合うて

 

   初蝶   近藤 れい

 初蝶の飛びながら飛ばされてゆく

 菜の花の空いつぱいに海の音

 菜の花へ坂東太郎の風そよぐ

 初かはづ家の中まで水にほふ

 鳥帰る島島に名のひとつづつ

 江戸川の日本たんぽぽ絮とばす


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   咲き満ちて今日より風の花となり  髙久 久美子

   囀を象る大樹の午前五時      同

  一句目は句会でたくさんの点が入り好評の一句。

 リズムよく句意もよく伝わる。皆がよいと点を入れる句は、

 なぜかどこかにか類想感が残る。安心して選べる句だからで

あろう。二句目は私がいただいた句だが、作者の発見がある。

「囀を象る大樹」を想像してみて下さい。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

     改札に人がなだれて四月来る  田中 虹二

  普段電車を利用していると、四月に入ってからの人の

 多さに驚いてしまう。新しい制服や背広に交じって、

 旅行者の大きなトランクも乗って来る。人の動く月だと

 わかっていても、その混雑は「改札に人がなだれて」の

状況になる。作者は驚きながらもその活気を喜んでいる

ようだ。何かが始まる四月なのである。