今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   緑雨   千葉 喬子

 蛇笏・龍太育てし甲斐の青山河

 夏日負ふて入るや快川火定門

 万緑の谷を出でざり狐川

 薫風や屋号をかかぐ文庫蔵

 外は緑雨点字でたどるミレーの絵

 落つる時水は音生む著莪の花

 

   新樹光  村上 德男

 ふんはりと足に遊びし春落葉

 春落葉ひとり住まひの庭に散り

 雨上がる令和の朝新樹光

 湧水のみなぎる力新樹光

 葉桜や静かな町を取りもどし

 窓若葉蛇笏遺愛の丸眼鏡

 

   涼風   中臺 誠一

 一葉の櫛笄や楠若葉

 涼風と渡るうぐひす張り廊下

 心字池の水面にゆるる若楓

 滴りや蛇笏の郷の空深し

 ミレー館の点字の絵画緑さす

 恵林寺や池の汀の花あやめ


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   双眼鏡置かれ蛇笏の籐の椅子  長谷川 あや子

  山廬吟行での一句。蛇笏・龍太の住まいはどこを拝見しても

 詠みたくなるのであるが、作者は縁側に置かれた坐り心地よさ

 そうな籐の椅子に目が止まる。双眼鏡が置かれてある。

  これは庭の餌台に来る鳥を眺めるためなんですよ。との

 秀實夫人の説明に、思わず一句成ったのである。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    蚯蚓出づどうするこれから先の事  喜多 裕子

  取り合わせが新鮮である。蚯蚓はどうして日向ばかりへ

 出て、干からびているのだろうか、と日頃思っている。

  「どうするこれから先の事」は自分に問いかけているよう

でも、蚯蚓に言っているようにも取れる。蚯蚓のように

乾びないでしっかり自分を見つめよう。