今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   鵜飼   岩田 洋子

 山を背に舳先揃へて鵜飼待つ

 今宵焚く割り木を乗せて鵜舟発つ

 瑠璃色の鵜の目の映す空模様

 剥製と見紛ふ鳥屋の動かぬ鵜

 梅雨晴れや水音走る城下町

 箱階段の手擦れはげしき梅雨湿り

 

   祭来る  石澤 青珠

 宵宮の法被も混じる神谷バー

 炊出しの女声飛ぶ祭宿

 堅巻きの葦簀百本祭待つ

祭来る滅法熱き弁天湯

手古舞を木遣りの発たす祭かな

板前の高下駄干され祭果つ

 

  半夏雨  中野 冨美子

教会の椅子の硬さよ半夏雨

青蘆に夕映え深くかくれゆく

無住寺に昂ぶり長し河鹿笛

一夜漬けの茄子の紺色けふ良き日

献茶会夏足袋清く打ち揃ひ

日ざかりや崖にはびこる鴨足草


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

  蜜を吸ふ横顔のある夏の蝶  鈴木 勢津子

作者の発見が感動のまま詠まれている。夏の蝶であるから

 大型の蝶であろう。口器から管を伸ばして花の蜜を吸う瞬間を

 横から見たのである。昆虫だから横顔はおかしいというなかれ。

  飛び回っている蝶にもこんな生き生きとした表情があるので

ある。「ひらひら」とか「舞う」などの表現が無いことも独自性

があってよかった。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

  菩提樹に花善の綱引き寄せて 喜多 裕子

 善の綱は五色の糸とも言われ、仏像や開帳の柱の結ばれた

ものを参詣者が引く綱である。善所に導く意味がある。

 よく見かける五色の綱の正式な名前は知らなかった。

 この菩提樹も釈迦が悟りを開いた樹で、よく見かける西洋

菩提樹ではないのだろう。ゆっくり鑑賞したい。