今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   葛の花   小野田 征彦

 終戦の日と同じ青空見上げけり

 秋暑し水と油といふ仲間

 銀山の間歩の湿りや葛の花

 人形焼きの達磨のかたち在祭

 山の端の三日月絵灯籠点る

 後三年合戦絵巻蝗跳ぶ

 

   盆の月   森島 弘美

 岩越ゆる源流迅し蟬の声

 持ち歩く傘と水筒終戦日

 溝蕎麦の雨は明るし魚の影

 木賊高し水輪広ごる雨の池

 夜は更けり窓辺明るき盆の月

 幽霊も天狗も不在堂の秋

 

   今朝の秋  吉田 七重

 石投げて水の応ふる今朝の秋

 東京に糠星見ゆる盆三日

 十二時へ座り直して終戦日

 とんぼうや水ある所風生まれ

 暮れ色の航跡島へ土用東風

 不死男忌や雨に脈打つ百日紅


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   手をの伸ぶれば影も手を伸ぶ原爆忌  小林 千秋

  青空に向かって手を伸ばせばその影も手を伸ばしている。

 しかし、原爆が投下された瞬間はどうであったろう。

  思わず助けを求めて伸ばした手の影は石に焼き付いて

 しまった。そのことを思い出させて、いま自分の影が同じ

 ように動いている幸せを謳っている。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    口にして秋口といふよきひびき  中田 千津子

  秋口は「初秋」の傍題になっているが、秋口で作られた句は

あまり見ない。「秋口までにはお届けしますよ」などと話し言葉

の中で使われてきたなじみのある言葉である。

 柔らかな日本語のひびきを作者と共に私も感じた。