今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

  今朝の秋  柳田 聖子

 野分あと大観覧車空に浮き

 新しき隣家の親し秋灯

 落慶の檜の香り今朝の秋

 新生児のぬくもり抱く生身魂

 下駄借りて郡上踊の輪に入りぬ

 屋久杉の天の(くら)さよ雁渡し

 

  里の空  小野田 征彦

 あかときの斯くまで白き酔芙蓉

 雲秋意風鐸ひとつ鳴りにけり

 子別れの鴉が騒ぐ里の空

 眉先に秋風が吹く交差点

 群青の空や真白き月ひとつ

 ささやかな祝金受く敬老日

 

  風の盆  千葉 喬子

 新涼の足から先に目覚めけり

 秋雲の子を抱くかたち汀女の忌

 菅笠のあぎとは若し風の盆

 をとこ等の雪駄地を打つ風の盆

 二泊して去るふるさとや盆の月

 街をぬけ私をぬけて秋の風


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   銀河濃し波より低き船員室  長谷川 あや子

 船客や荷物を優先して船員室は船の下の方に置かれる。

 狭い船室の丸窓からは打ち寄せる波が見えるであろう。

  海の穏やかな日は夜空に銀河が見えるであろう。

  海のロマンを感じさせる一句。実際に船室に入って

 体験できた句と思う。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   桐の実や風に黄金の鈴となり  渋谷 乃里子

  桐の花は紫の花を上向きに咲かすが、実は下向きの

 卵型。やがて二つに割れて種を散らす。硬い実の割れる

 までの様子が「黄金の鈴」状態である。よく観察されて

 いるし、「風に黄金の鈴となり」の捉え方がよかった。